袖を通すだけで不思議と背筋が伸びるような、勇気をくれるシャツ。
どこかユニセックスな印象を持つこのアイテムにとりわけ思い入れの深い若手ブランドを今日はご紹介します。
-まず初めにブランドの簡単な特徴を教えて頂けますか?
ジェンダーレスをテーマに立ち上げたシャツブランドです。
当初はジェンダーレスと聞いてよく思い浮かぶ可愛い男性や、格好良い女性をイメージしてスタートしたのですが、ブランド名を決めてからはそんな風に絞るのも違うなと考え直したんです。
そもそも「ジェンダーレスとは?」と考えた時に、一般的にアイコンと言われているジェンダーレス男子や女子ももちろん素敵だとは思いますが、
「男女の境目を無くしましょう」が真の意味ですので、
ジャンルでカテゴライズする必要すらなく、まさに何者でもない人間そのものとして見ることがあるべき形だと思ったんですね。
-素晴らしいテーマですね、結果として性差はあるにしても自由であるはずの考え方や好きなものの選択を縛られる必要は無いはず。
まさにその通りです!だからブランド名のh(アッシュ)もフランス語でアルファベットとして存在するのに文章にすると発音しない言葉、転じて何にも縛られないという思いから付けました。
ただ理念としてはそうなんですが、男女という言葉自体を一切使わないかと言うとそれもファッションを扱う以上は、「男女兼用」や「ユニセックス」という言葉くらいは説明する以上使わざるを得ない。
もどかしいところではありますが、でもそれは皆が着れるようになる為であって、決してカテゴライズが目的ではないんです。
-そこでユニセックスの象徴とも言うべきシャツをブランドの主軸に置いたんですか?
シャツに関しては純粋に好きだったからですね、初めから「シャツブランドで行こう!」と考えて決めたわけでなく、
一番最初に服作りを始めた時、何故か勝手に作っていたのがシャツだったんですよ(笑)
二十歳くらいの時からでしょうか?
振り返ると昔から気付くとシャツばかり買っていました、シャツファッションが何故かお洒落だと感じたんたですね。
不思議とシャツを素敵に着ている人を目で追っちゃうし、自分自身も季節問わず「いつもシャツばかり着てるね」と言われてきました(苦笑)
-幼少期からそのようなスタイルだったんでしょうか?
いえ、小さい頃はスカートを穿かされてましたし、ピアノもやらされてました。
自分でも女の子なんだという認識はずっと変わってないのですが、
次第に「女の子が格好良くなってもいいんじゃないか、もっと自由でもいいんじゃないか」と思うようになったんです。
そう思うきっかけはやはり思春期の頃ですね。
誰かを好きになる時に性別で考える事がなく、直感で好きになった相手の性別がどちらでも関係なかった。
誰でも好きになると言う訳ではなく、皆さんが男性だから女性だからと誰でもいい訳では無いように私も好きになった相手だから好きなんです。
性別などではなく人間が好きなんだと自分では思っています。
そんな時、服装に関しても「女は女らしく、男は男らしく」という風潮に違和感を覚えて、性差を大きく感じさせてこないシャツというファッションに魅了されたんだと思います。
-ジェンダー論に対する思想と、その純粋な生き方と、手掛ける潔いクリエイションが、不思議と一本筋が通っていますよね。
逆にそこがブレちゃっていたら何も始められない人間だったかも知れませんね。
ある日突然ブランドをやろうと思ったですよ。
最初は仕入れた服を売ろうと思ってテナントを探していたんですが、それもコロナの影響で頓挫してしばらく燻ることになりました。
でもステイホーム期間中のある時急にやる気が再燃し、その日の内に生地を買ってからは下書きも無しに服を作り始めました。
それから一週間、発想が消えない内にと休みなく作り続けたんです。
それまで服作りの経験も無く、服飾系の進学経験も無かったんですが、本当にある時ふと目覚めました。
裁縫一つ満足に出来なかったですし、インターネットで調べすらもしなかったんですが、それで良かった。
何故ならクオリティーの担保に関しては量産する業者さんに任せればよくて、私はサンプルだけ作ればいいと思っていたので。
デザイン画も指示書もパターンも書けないのでサンプルを作って、「これと同じものを作って下さい!」と言うしかなかったんです(苦笑)
-スイッチが入ってからは目覚ましい行動力ですね。
こんな言い方あれですが、逆にコロナが良いタイミングになったかも知れないですね、実店舗でただの古着屋になるでなく、デザイナーとしての才能を啓示されたかのような。
あれ?でもステイホーム以降と言えば、まだ数ヶ月しか経っていませんよね?
そうなんです、最初の一週間でサンプルを作り、二週間目に業者に発注、三週間後にはすごく苦手だったSNSを立ち上げ…と、スタートからここまで一ヶ月程度です。
投稿から数日は1いいねも付かなかったんですが、毎日投稿する毎に100を超えるようになりました、まだローンチ前のブランドに対して期待してもらえているようで嬉しかったですね!
-十代から家を飛び出したり、英語もしゃべれないのにパリに滞在したり、とんでもない行動力だ。
制作の話をもう少し掘り下げたいのですが、hさんの作品と言えば異素材切り替えと刺繍が代名詞ですが、誕生秘話を教えて頂けますか?
ベーシックなシャツがベースではあるんですが、切り替えは何か物足りないなーと思った時、おもむろに家にあった自分の袖や襟を切り割いて組み合わせてみたんです。
刺繍も経験が無かったが本当に何も考え無しに針を刺し始めたら、ワンポイントで印象がすごく締まった。
そこからですね、私本当に全てフィーリングなので(笑)
でも随所に拘りは散りばめていて、例えばただの色違いにしたくないので、ボディカラーに合わせて最適なプリント位置をずらしたり、メッセージを変えてみたり。
カップルで着た時にベタなペアルックにならないような工夫もしています。
マンネリなコーデに差をつける分かりやすい切り替えアイテムから、控えめなワンポイントのみのベーシックな大人向けアイテムまで幅広い年代に愛してもらえる振り幅がhの強みです。
-最後になりますが、今後の展望をお聞かせ下さい。
今回はファーストコレクションなんで、福袋やセールも用意出来ませんでしたが、まずはセールスが上手くいった足掛けに春夏の新作を作ってまたその次のコレクションへ…といった循環が上手く回るようにしたいですね。
当面の目標はそこですが、今後はもう少し飛び道具的な個性派アイテムも作ってみたいですね。
ベーシックなものが一番売れるのは分かっているんですが、着てワクワクするような、そんな振り幅がhの魅力なので。
ジェンダーレスがスタートではありますが、将来的には世代をも超えたい。
性別はおろか年齢にも縛られて欲しくないので、老若男女を問わず愛されるブランドになっていきたいです。
-洋服作りだけでなく、そのボーダレスな生き方や、エネルギッシュな行動力が太陽のようにポジティブな影響を周囲に注ぐhさん。
その夢、きっと叶うことでしょう。
コロナで暗くなってしまった一年ではありましたが、来年最高のスタートを切れるよう、世代を超え沢山の人に着てもらいたい一着です。
ブランド名:h -ash-
URL:[Instagram]@ashsa_n2020
シャツをベースに異素材切り替えやワンポイント刺繍等、ありそうでなかったセンスの光るディテールと、老若男女を問わないバランス感覚で2021年発信する気鋭アパレルブランド。